瞬間、女の子の大きな声がした。 「キャー!痴漢!この人痴漢です!!」 その声に周囲の人がざわめき始める。 抱き寄せられたまま少し移動させられた。 「……柚季ちゃん、大丈夫?」 上から声がして、顔を上げる。 「莉央……さん?」 いつもとどこか違う雰囲気の莉央さんが涙を拭ってくれて、なぜか「ごめんね」と謝られた。 首を振って、莉央さんにすがりつくように顔を埋めると、ぎゅっと抱きしめられた。