依頼をしてから1週間。


未だに痴漢は現れない。


放課後、むっと顔をしかめて事務所に入る。


「あ、瑠稀ちゃ……」


と、こちらを向いた学が言いかけ、体を半分に折ってくしゃみをした。


「あー、ごめん」


謝る声も、鼻声だ。


「風邪?」


昨日はバイト休んだから事務所に来てないが、ずっとこんな感じだったのか。


「んー、多分。このところ、調子悪くてさー」


近くにあるティッシュで鼻をかんで学が言う。