「お腹空いたん?」
微笑んで訊くと、さらに顔が赤くなる。
何か食い物、と鞄を見ると飴が出てきた。
お腹に溜まる物ではないが、それを全種類並べ、何がいい?と訊く。
女の子は迷うことなく黄色いパッケージの、柚子の飴を指差した。
「それあげるよ。……柚子、好きなん?」
訊くと、女の子はコクンと頷く。
「ゆずの花、白くてかわいいの!」
「……確か、ユズキちゃん、やっけ?『柚』って名前についとるの?」
「うん!ゆずの花がさく季節に生まれたから、『柚季』って名前にしたんだって!」
と、見せてくれたワークの表紙には『宇佐美柚季』と書いてある。

