彼女が降りるという駅まで、とりとめのない話をした。
たまに大阪の訛りが入っていることから、大阪の出身かと訊ねたら「両親は関東の人だが、仕事の都合で長いこと大阪にいたから大阪弁がうつった」とか、「それもこちらに来てからはあまり出なくなったが、ポロっとこぼれることがある」など。
揚羽駅に着くというアナウンスが流れると、彼女は鞄を肩にかけ直す。
「じゃあ私、ここで降ります。お喋り楽しかったです!」
にっこりと笑みを浮かべる顔は魅力的だ。
それに釣られて、こちらも微笑んで返す。
「いえ、こちらこそ」
彼女は、言うか言うまいか数秒悩む素振りをした後、口を開いた。
「えっと……私、宇佐美柚季っていいます!」