景色を見て乗り過ごしてはいないと確認したのか、胸を撫で下ろす。
「目は覚めた?」
声をかけると、彼女が振り向く。
なぜか俺の顔を見つめていることに気付き、女装がバレたのかと一瞬不安になったが、今までそんなことは無かったと思い直す。
「どうかしましたか?」
「いえいえいえ!何でもないです!」
訊くと、胸を押さえる。痛むのか?
そこでガタンと電車が揺れ、窓に頭をぶつけそうになる彼女の肩を支える。
「どういたしまして。気を付けてね」
お礼にそう答え、先程の無防備な姿を思い出し、続ける。
「次からは、女性専用車両に乗ってね。それが無理なら、その車両になるべく近いところに」
2つ隣は女性専用車両だったよな、と目をそちらに向ける。

