『まもなく揚羽駅です。お降りの際は──』


駅員のアナウンスに、鞄を肩にかけ直す。


あれから少しお喋りをしていたので、あっという間に時間が過ぎてしまった。


「じゃあ私、ここで降ります。お喋り楽しかったです!」


「いえ、こちらこそ」


「……えっと……私、宇佐美柚季(ウサミ ユズキ)って言います!」


あわよくば女性の名前を、と勇気を振り絞って言ってみる。


「え……」


女性は一瞬驚いたような顔をしたあと、私の顔を凝視して何やら呟く。