「大丈夫?何があったか話せる?」
友紀がミルクティーを一口飲んだのを見て、梨沙が訊く。
「……あ、朝、いつも通り、電車に乗ったの」
缶をぎゅっと握り、ぽつりぽつりと話しだす。
「そこで、ち、……痴漢に遭って……。初めは、鞄か何かがお尻に当たるなって思ってたんだけど……、腰とか、む、胸も触られて……。こ、怖くて、声、出なくて…………」
もういいと言うように梨沙が友紀を抱き寄せて頭を撫でる。
まだ降りる駅ではなかったが、すぐに電車を降り、家に帰ってシャワーを浴びて、着替えてきたので登校がこんな時間になったと言う。
「…………」
「瑠稀、顔。気持ちは解るけど、怖いわよ」
ちょんちょんと自分の眉間を指でつついた梨沙に指摘されて、無意識のうちに寄っていた眉間のシワを擦る。

