約束の時間より、15分遅れて喫茶店に入る。


相手はすぐにあたしと気付いたようで、笑顔で片手を挙げる。


それには応えず、相手の正面のイスにむすっとした表情で座る。


「久しぶりだな、瑠稀」


「……久しぶり」


意地でも『お父さん』とは呼びたくないので、その一言で口を閉ざす。


「これ、お母さんに渡しておいて」


男は鞄から養育費が入っているであろう茶色い封筒を出し、テーブルに置く。


それを黙って自分の鞄にしまう。


「……もういい?」


「少し、話をしないか?」


男がそう言った時、ケーキが運ばれてきた。


男はそれをあたしの前に置くようにウェイターに言う。