かたんと小さな音がして振り向くと、莉央が和室から出てきたところだった。


莉央はそのまま俺がいるベランダの戸を開けて外に出て来る。


「体調と宇佐美さんはいいのか?」


莉央が戸を閉めたのを見て言う。


「体調は大丈夫。柚季ちゃんは寝ちゃった」


「そうか。冷蔵庫にスポーツドリンクが入っているから飲んでおけ」


手摺に腕を預け、薄暗い空を眺める。


「うん、ありがとう。……寒くないの?どうせ柚季ちゃんが和室に入ったあたりからここにいたんでしょ?風邪ひくよ」


「……まだ大丈夫だ」


それに、つい数時間前まで熱を出していた人に言われたくない。


「1年に1回しかひかないからって油断しちゃだめだよ。それに、その1回がめちゃくちゃ重いんだから」


「……気を付ける」


莉央はだんだん母親みたいになってくるな。なぜだ。周りが年下ばかりだからか。


「……莉央もぶり返さないように気を付けろよ」


と言うと、


「そうだねぇ」


なにやら楽しげに微笑んだ。