「何で言ってくれなかったんですか……。ていうかいつから気付いて……」
言わなかったのは、言う機会が無かったからが80%、柚季ちゃんが覚えてるか解らなかったからが15%、その他5%。
「……言う機会がなかったからね。電車で会った時、名前を聞いて気付いたけど」
毛布の下で顔を赤くしたり青くしたりしてるんだろうなぁ。
「あの節はどうも多大なるご迷惑を……」
毛布の中身がごそごそと動く。
土下座をしていると思われる。
口元を押さえ、毛布に包まれた塊から目を逸らす。
「いや……いいよ……」
くくっと喉が鳴る。
「莉央お兄ちゃん、笑いましたね?」
毛布から顔を出し、上目遣いで睨まれる。
「……うん、ごめんね」
そこであっさり謝られてもなぁ、と微妙そうな顔をされた。