あたしが笑顔で話しているからか、何を勘違いしたのか男は何かを求めるように必死に喋り出す。
「大人しそうな子かい!?腰が細くて、胸が小さい……」
友紀は胸が無いことを気にしているから、やっぱりコイツなんだろう。
続けて口にする条件も当てはまる。
「確か、先週の火曜日に、」
「──その汚い手で触ったの?」
笑顔を消し、デスクを膝で思いっきり蹴る。
小さく悲鳴を漏らしてビクリと体を揺らし、顔が真っ青になった痴漢を見下ろす。
「あたしの大事な友達なの。──アンタ、地獄に堕ちればいいよ」
そう言い放つと駅員の方を向いてデスクを蹴ったことを謝る。
事情を察してくれたようで、右手を振った駅員に頭を下げて部屋を出る。

