電車がもうすぐ揚羽駅に着くという辺りで、ルークの言葉がイヤホンから聞こえた。
『反対側の扉』って何だ?と、体を少し捻ってそちらを見る。
たくさんの人の中からサラリーマン風の若い男性が見えた。
何?と小さく呟く。
『その奥』
再びそちらを見、目を凝らすと、今の男性の後ろに、50代ほどの男の横顔が見えた。
その2人の間から、ちらりと栗色の頭が見えた。
「……!?」
息を呑んだところでアナウンスが入った。
『対象?』
学が言う。
『それかは解らないが、ドアが開く瞬間に確保する。いいな。瑠稀はさっき言った通りに』
「……了解」
小さく答え、動き始めたルークの後ろに続く。