店から出て、振り返って建物を見た。
「汚らし…。」


今思えば、入る前に気付くべきやった。怪しすぎる、このビル。


「待って〜っ。」

友達が走ってきた。私が睨むと

「コレ…。」

一万円札を握った手を私に差し出して来た。

「何。コレが何。」

「二人で分けよう。」

友達は、私に媚を売るような顔。


情けない顔すんな。


「いらんわ。使えば。」

「嫌〜。じゃあ、アンタの為に何か買う〜。そんなこと言わんといて〜。」

「そんな汚らしい、キショイ金、いらんし、そんな金で何買っても、私は受け取らんわ。」


私は友達を残してスタスタ進んだ。友達はもう追い掛けて来なかった。



視線を感じて顔を横に向けると、小指のおっちゃんが立っていた。