「あーあー。ポチちゃん今日も健気におまえのワガママきいてんなぁ」

すぐ横で今さっきのやりとりを黙って見てた友達が、気の毒そうにもう居なくなったポチの背中を目で追うように俺に嫌味のつもりかそう言った

―――フン

「好きでやってんだろ。俺は強要まではしてない」

「つもり、だろ。してるよ思いっきり。超パシリじゃんカワイソウに」

椅子の脚を蹴られて振動が走る



ポチ。
イジメのような呼び名のその本名は史也(フミヤ)。知ってるけど、呼んだことはまだ一度も無いその名前の一年は、俺の忠実なペット


「そこらの犬よりよっぽど言うこと聴くからな」

肘を突いて言ってやると、嫌味を言っていた友人は呆れたような顔をするだけでそれ以上何も言わなくなった


端から見れば明らかに後輩イジメだととられるだろうポチへのこの扱いはそろそろ3ヶ月になろうとしている。
その間、学校が休みの日以外は毎日、休み時間毎・放課後毎に三年の教室に姿を見せては俺に懐くポチ

俺が呼んだわけじゃない。あいつが勝手に来て俺の言いつけを確実に・嬉しそうに聞くだけだ
イジメならそんな嬉しそうな顔するわけないだろう

そう、だからこれはイジメではない