「大樹くん……」 大樹くんが泣いていた。 初めて大樹くんの泣きを見る。 あの時のことが、こんなになるまで苦しめてたんだね。 「……本当は俺、怖かった」 「えっ……?」 涙を流した大樹くんが発した言葉は怖かった、ということ。 何が怖かったの? 「樹里にずっと思い出してほしかった。だけど反面、思い出してほしくなかった」 「なん……で」 「好きな子がトラウマで自分の過去を記憶から消したのに、それを俺が勝手にぶり返して嫌な思いしてほしくなかった」 ……そんなこと。