「……名前を呼んで、」 その言葉とともに、涙が零れ落ちた。 大樹くんはあたしの名前を呼んでくれるだろうか。 「名前を呼んで……全部思い出したから、お願い」 懇願するように、心から思いを伝える。 お願い、鎖を断ち切って。 「……っ、樹里」 「ック……大樹く、ん」 呼んでくれた、あたしの名前。 これで、大樹くんを縛る鎖は切れた。 あたしの、約束という鎖も切れた。 後ろからあたしに回された腕に触れてみる。 すると、何か雫のようなものがあたしの手の甲についた。