「“お願いがあるの、大樹くん”」 あの日の言葉をゆっくりと繰り返す。 大樹くんは何も言わない。 黙ったままの大樹くんにあたしは言葉を続ける。 「“思い出すまで、あたしの名前呼ばないで?”」 「……っ」 「“あたしがそのことを思い出したら……名前を呼んでって必ず言うから、それまで待ってて”」 「……“分かった。じゃあ、必ず守ってね”」 あたしたちは、ドラマのセリフみたいに繰り返す。 何年経っても大樹くんは覚えていた。 あの時交わした言葉を。 「“絶対言うから、約束だよ……”」