「っ、く……ヒック」
あたしの目からは、涙が零れた。
これが、あたしの……。
消えていた、知らない過去。
憶えていたくなかった過去。
「なんで、こんなっ……こと」
悔しくなった。
なぜあたしはあの日、すぐ家に入らなかったのかと。
……なぜ、あの時大樹くんが帰ることを止めなかったのか。
でも、今更悔やんでも遅いのだ。
もう終わってしまったことだから。
「……樹里?」
問いかけるように名前を呼ばれた。
「その名前で呼ばないで!」
いやだ、やめて。
大粒の涙を流しながら、叫んだ。
そしたらまた、何かが頭の中に流れ込んで来た。

