「理由は、樹里が大事なことを思い出さないから」





「大事な……こと?」






「でもまぁ、樹里が思い出さないのも無理はないけどね。よっぽど嫌なことだったって聞いたし」




よっぽど嫌なこと?





「何それ?嫌なことって?」





そう聞くと、唯華はしまった、と言わんばかりの顔になった。





「いやっ、別に何もないよ」




いやいや、なんでもなくない?





「とにかく!樹里が思い出すまで名前で呼んでほしいなんて言っちゃダメ!」






あたしの大事なこと。





「あ、唯華、お願いがあるの」





あたしは、唯華の方を向き直した。