「あ、ここ、知ってます」
ついこの前できたところだよね。
「ここは、駅まで行くと書店があるので、そこを右に曲がって下さい」
おぉ、分かりやすい説明。
「そうですか、ありがとうございました」
男の人は立ち去って行った。
「今の人、結構お金持ちかもな」
「へ?今の人?」
「服がほとんどブランド物だったし、高そうな時計もしてたし」
そ、そんなところまでっ!?
改めて惚れ直しましたっ!
「すごいねっ!大樹くん」
「そんなことないよ、道を聞かれたから答えただけ」
興奮していたあたしは忘れていた。
あたしの名前について聞くことを。
だけど、この時は聞かなくて正解だったのかもしれない。

