「樹里!」





涙が出そうだった。





だけど泣かなかった。






ううん、泣けなかった。





あたしの親友の唯華が心配そうに駆け寄って来たから。





山崎くんが立たせてくれる。





「ありがと、本当に」





「あ、ああ、大丈夫ならいいんだけど……」





山崎くんにお礼を言うと、照れたような顔をした。






唯華以外には事情を教えていないから、何も知らないのだろう。





「樹里……帰ろう?」





気遣ってくれてるのだろう。





あたし、みんなに気を遣わせてばっかりだね。






「うん、今日はそうする……」






その後、泣きたくなる衝動を抑えながらお店を後にした。