あたしは、掴まれた腕を見て、ふと何かを思い出した。







『ははは、抵抗しても無駄だよ』





誰の声か分からない、なのにその声を思い出すと頭が痛くなる。






危険信号を発しているように。





なぜか手を振り払えない。







「い……や」






頭の中がごちゃ混ぜになって、何も分からなくなる。





何が正しくて何が正しくないのか。






答えなんて分からない。






恐怖で固まっていたその時。




後ろから腕を回された。







「すいません」





あたしはその声を聞き、後ろを振り向く。







……大樹くんだった。