「お嬢様、お待ち下さいっ! これ以上はッ!!」

闇色の髪とそこ知れぬ青い瞳が印象的な騎士は、鋭利な美貌に焦燥の色を浮かべながらも、眼前を駆ける少女に向かってそう叫ぶ。

今は凛とした後ろ姿しか見ることを許されないが、少女の清楚さと妖艶さが等しく含まれたその美貌が、疲労に満ちていることは安易に想像できたからだ。

無意識に声が大きくなってしまったことを悔やみながらも、彼は少女リヴィランスの後ろ姿を、言葉では言い表せない苛立ちを込めて見つめた。