足元に転がってきた空き缶を蹴ったであろう
”彼”に視線を移した。
開いたままどうしようもなくなった口を
気にする余裕なんてなかった。
「 ・・・玲央 」
小さくそう言った大勇くんの表情が
少し硬いように見えた。
「 遅ぇよ、大勇 」
「 連絡くれればよかったのに~ 」
「 うるせぇ 」
電柱に寄りかかっていた彼は
白い息を吐くとゆっくりと
私たちの方へ近寄ってきた。
鼻が赤くなってる・・・。
春が近いって言っても
相変わらず気温は低くて寒いのに
どれくらい待ってたんだろう・・・
「 あ、あの・・・ 」
「 ・・・・なに 」
こういうタイプは
寒くても寒いって言わない。
ポケットに入れていたカイロを
彼に差し出すと彼はしばらく
その手に視線を落とした後、
カイロを持っていた私の手ごと掴み
制服のポケットに突っ込んだ。
「 ・・・・っ!? 」
昨日、強引にファーストキスを
奪って行ったことを忘れたわけじゃない。

