「 お前ら、明日行って来いよ。
拓未なら俺がついてるから 」
紫緒さんが口を開くなり、
ココアから手を離した玲央くんは
私に背中を向けて座っていて、
それが少し寂しく感じたけど
私の中でそれは玲央くんが
怒ったんだと確定してしまって、
何も言えなくなってしまった。
「 東高に行くの? 」
「 そうだ。やるなら正々堂々とって
言っただろ?怖いのか? 」
「 全然怖くねー!!! 」
紫緒さんのからかいを含んだ声に
すずくんはムッとして言い返した。
”よく言った!”と紫緒さんは
満足気に笑ってすずくんの頭を
乱暴に撫で回した後、ボスンッと
勢いよくベッドに腰をかけると
拓未くんが心配になるくらい
ベッドが弾んだ。
「 おっさん、タチ悪ぃな 」
「 今更だろ~?
そもそも寝すぎなんだよ。
みんなが心配してるっつーのに
寝てるってどういうことなんだよ~ 」
そう言いながら拓未くんの布団を
バシバシと叩いて、更にベッドを
揺らしていた。
「 ・・・いや、数針縫ってるし
麻酔が効いてるんじゃ・・・ 」
「 おっさんバカだから
分かってねーよ・・・ 」
すずくんは小声で言っているつもりらしいけど
向かいの私にも丸聞こえで、
バカにしたような大勇くんの声で
紫緒さんの動きがピタッと止まった。

