これが彼なりの”お迎え”なのか、と
思い始めたのは最近で、
だけど彼と手を繋ぐことに
抵抗を感じなくなったのは
随分前だった気がする。



「 今日だね・・・ 」


「 拓未は自分の誕生日なんか
  忘れてそうだけどな 」


「 サプライズ成功の予感? 」


「 さぁ? 」



軽くお互いの手を握りながら
ゆっくりのペースで足を進めて、
玄関前で足を止めた。



「 すずくん・・・だよね? 」


「 ・・・だな 」



玄関で靴を履き替える拓未くんの
後ろに、小さなすずくんの姿が見えた。



その手に持っているものは・・・
まさかとは思うけど・・・



「 あれ・・・クラッカーじゃないよね? 」


「 いや、クラッカーだろ 」


「 ・・・・ 」



拓未くんの誕生日当日の朝、
サプライズ前から既に
失敗の予感しかしない・・・。