「ほら、行くよ」
先に歩き出した優が私の方に振り向いて言う。
「っ!…言われなくても、分かってる」
私も小走りで走り出す。
でも、そんなこと言っても、
優が歩いている方向にはただただ田んぼに囲まれている、細く続いた一本道しか見えない。
ミーンミーンミーン…
虫の声と鳥の声と…風の声(?)が私たちを囲むように鳴り響き、これ以上聞いていたら、頭がおかしくなりそうだ。
優と3mの間をキープしつつ、優の後を追っていたら
優が振り返った。
「春(はる)。もうすぐだぞ。頑張れ」
きっと遅れてついてくる私を疲れたんだと勘違いでもしたんだろう。
いや、私はただ
優と並んで歩くのが嫌なだけ。
「ふんっ…」
なによ。そんなに体力ないように見えるのかしら?私。
少し悔しかったから、
私は大股でわざとらしく優を通り越して歩き出してやった。