こういう時。
自分がどんな人間なのか、思い知らされる。
好きな人を
大切な人を
信じられない自分の人格。
ううん。
信じたいよ。
だけれどやっぱり現実は、現実以外のなんでもなくて。
目の前の光景が、全てな気がして。
それを裏切ってでも彼の言葉が正しいと言い切れる自信がなかった。
信じる、べきなんだろうな。
私にはできない・・・。
「沙姫ちゃん、大丈夫?ごめん、俺余計なことしたかも」
突然の声に我に返る。
振り返ると、拓海くんが私の様子を伺いながら申し訳なさそうにしていた。
そっか、拓海くん私が振られたの知ってるから・・・
「あ・・・うん、大丈夫・・・ありがと」
笑えてるだろうか。
笑えてないな。
拓海くんが不満そうな顔してる。
その時。
「ーー!」
後悔した。
なんで真っ先に、あれを消さなかったのか・・・。
「あっ沙姫、なぁ、なんだよこの人混み、は・・・」
直希。
「だめ!!」
私は反射的に大声で叫んだ。
だけどもう遅かった。
彼の視線が黒板に釘付けになる。
私が叫んだせいで、騒がしかった周りは水がひくように静まる。
「なんだよあれ」
そう言った彼の表情からは、焦りが滲み出ていた。

