「わり・・・無理だ俺」

目も合わせずに呟き、言い終える前に走り出した。
のどの痛みを必死で飲み込む。
早くベリーの視界から消えたかった。

どっか・・・人、いないとこ・・・。

とっさに目に入った近くの教室に飛び込み、即座に扉を閉める。
幸い人はいなかった。

「・・・っ」

扉にもたれかかり、そのまま崩れ落ちるようにして座り込む。
こらえ切れない涙がこぼれた。

自己嫌悪。

もう嫌だ。

声を殺して泣き喚く。
何を期待していたんだ。
何を夢見ていたんだ。

付き合いたい、とか?
幸せにしたい、とか。
ずっと一緒にいたい・・・とか。

勝手に一人で盛り上がって、自惚れて、勘違いして。

思い上がってんじゃねえよ・・・。
無理に決まってんだろ。


ベリーは俺より教師をとった。
これが大人の事情の正体。

俺と付き合えない理由。



俺と一緒にいたら、教師を辞めなければいけなくなるから。

ずっと、わかってはいたことだけど。


・・・たぶんベリーの考えに、隠すって言う選択肢はない。
ベリーはそういう人だ。

『すきだよ』 
『すきです』

なんでか、自分の声と沙姫の声が重なった。


一瞬、息が止まる。


ああ。
そうか。
沙姫。

俺・・・失恋したんだ。