俺は後ろに歩き出した。
ふて腐れただけ。
捕まえてくれるんじゃないか、
なんて微かな希望。
馬鹿だ。
ガキかよ・・・。
―瞬間。
ふわり、と何かに包まれた。
長い髪が視界で舞う。
背中に体温を感じる。
途端に、心臓が暴れだした。
硬直したまま動かない。
動けない。
ストロベリーの香水が思考を乱す。
って!!
突き放すように体を引き剥がす。
あっぶね!えっ何!?今俺・・・えっ何!?
テンパるおれをよそに、ベリーは呆然と空中を眺めていた。
そしてはっと我に返ると、堅苦しく笑う。
「あ・・・ごめん。私もう行くわ」
ついに、あはは、と面白くもないのに笑い出す。
心を貫かれたようだった。
その顔が、
あまりにも痛々しくて、
ぐさりと突き刺さって、
「待って」
引き止めてしまった。
「・・・好きだよ」
「うん・・・。知ってる」
柔らかく、どこか困ったような笑みを浮かべ、そっと俺の頭を撫でる。
それだけで、痛いほど伝わってくる。
安心感と同時に感じる、ある程度の位置に引かれた一線の存在。
どれだけ越えたくても、入りこむ事すら許されない絶対領域。
やりきれない気持ちでいっぱいになる。
漠然とした悲しみに飲まれて、抵抗する力が抜けていく。
これはたぶん、はぐらかされてるんだろ。
たぶん・・・相手にされてないんだろ。
ベリーの不自然な笑顔がぼやけていく。
もー無理だ・・・限界。

