私がふられた翌日。
の、放課後。

「直希」
「ん?」

見上げた視線が一瞬だけ揺れる。
わたしはぎゅっと手を握った。

「あのさ・・・」

苦しい。胸がつぶれそう。うまく、言葉が出ない。

「ベリー・・・に、なにか・・・」
「え、ごめん何?」

言わなきゃ。言うんだ。言え私!

「ベリーは・・・大丈夫?」

振り絞るようにして声を出す。
届いたかどうかもわからない、消え入りそうなか細い声。
それでも私には精一杯の叫び声だった。
それだけ言うと、顔ごと背ける。

あーあー馬鹿だ。情けない・・・。

「心配してたんだ」

・・・意外って言われてるみたい。

「平気なんじゃない。学校来てんの知ってるだろ?」
「え?う、うん」
「じゃあ本人に聞けよ。つか、何で俺に聞くの」

なんか・・・余裕がない?

「なんでって・・・」

一瞬口ごもる。
ねえ、なんで目を合わせようとしないの、そっちこそ?

覗き込むように身をかがめると、あからさまに目を逸らされる。
拒否してる・・・。

何も言えなくなった。

触れちゃ、いけない。

「ごめんなさい」

くるりときびすを返す。
あーあ、これでもう話せないかも。
私は盛大なため息をついた。

突然、何かに引っ張られた感じがして立ち止まる。
振り向くと、制服の裾を直希の手が掴んでいた。

「わり。言い過ぎた」
「う、ん」

拒否撤回・・・。

「あのさ」

目が合う。

「・・・帰り、付き合って」
「うん?いーよ」

平静を装ったつもり。
内心、飛び上がっちゃうくらい嬉しかった。
だってさ?だってさ!?
これって、放課後デートというやつなのでは・・・!?

私は心の中でガッツポーズをし、急いで蒼衣に断りを入れに行った。