「うん!沙姫ちゃんだよ」
「うんじゃないでしょ、放置しといて。ごめん、沙姫ちゃん?」
「いえいえ」

よかった、気づいてくれた。
初めて話したけど、穂坂さん意外と優しそう。
割とキツめな印象あったから、安心。

私は2人を交互に見る。

「拓海くんと穂坂さんて、もしかして恋人?」
「ないない!ただの幼馴染だよ」

手を左右に振り、意外そうな顔をする穂坂さん。
拓海くんはそれを凝視している。
ふーん、なるほど、幼馴染ね。

私があれこれ邪推している間に、保坂さんは救急箱に何やらいろいろ詰め込み始めた。

「2人でサボり?」
「そう、さっき屋上にいたんだけど」
「あらー青春してますね」

まるで自分が年寄りみたいに言って、ニッと笑う。
そして、満杯になった救急箱を片手に、じゃあね、と言い残して保健室を出て行った。

「ベッドだ!ひゃっほう」

扉が完全に閉まったのを確認してから、白いベッドにダイブする。

我ながら、ぎこちないにも程がある。
ベッドだだって、当たり前だよ保健室なんだから。

だけど拓海くんからは何の反応もなく。
私はまさかと思って起き上がる。

「・・・くふっ」
「今笑った?笑ったでしょ!?」
「だ、だってさ、あはっ」
「もう・・・最悪」

拓海くんは気まずそうな顔をして近くにあったいすに座る。

合わない視線を面白がって追っていると、じろっと睨まれる。
だけど顔が真っ赤なのは一目瞭然でぜんぜん怖くない。

私はにやにやしながら拓海くんを凝視する。

「ねえ拓海くん?」
「・・・」

無反応。それなら無言の肯定と受け取る!
私はベッドを降りて拓海くんの前にしゃがんだ。

「好きなんだ?穂坂さんのこと」
「・・・言うなよ」
「言わないよ」

火照った顔をぱたぱた扇ぎながら疑いの目を向けてくる。
私はそれに笑顔でうなずいた。

だって、なんか嬉しいし?
まあ本当に偶然なんだけどね。