きみのうしろ姿


パニックに陥った私は、自分の腕を抱きしめるように鷲掴んだ。

私のせいだ。
あの時だって!
自己嫌悪とか怒りとかのいろんな感情が、頭の中にどんどん入り込んできてごちゃ混ぜにされて、何もわからなくなる。

きもちわるい。
頭がくらくらする。
のどがいたい。
吐きそう。
拭っても拭っても、涙が止まらない。

「うぅ」

なのに!!
何で私だけ無事なの?
何で平気で泣いていられるの!?

私だけ・・・!!



「おーい?」

――・・・。

「おーい、沙姫ちゃん?」

今・・・、

「えっ」
「何、暴走してんの」

振り返ると、倒れていたはずの拓海くんが、上半身を起こして苦笑いをしていた。
そして、唖然としている私の涙を自分の袖で拭う。

「拓海くん大丈夫!?」
「んな大袈裟な・・・ジャンプしてスライディング!しただけだよ、俺」
「怪我は!?」
「名誉の傷を少々」
「ふざけないでよお!」

自慢げに言う拓海くんの袖を掴んで、泣きながら訴える。
手が震えた。
流石にそこまでだとは思わなかったのか、拓海くんはごめん、と謝った。

「俺は、大丈夫だから」

柔らかい笑顔で言う姿を見て、ふっと感情の波が押し寄せる。

今までずっと何かで囲われていた涙が、縁から零れる。


「っ!」

その瞬間、私は衝動的に、拓海くんを抱きしめていた。

「えっ?えぇ!?」

すっとんきょうな声を上げてあたふたと動揺し始める。
それでも私は止めない。

「ごめん・・・少しでいいから」