きみのうしろ姿


んん?なんか奇妙な顔をしているな。
不思議に思っていたのが顔に出たのか、目が合うと

「やっと笑ったから」

と説明してくれた。
やっと笑った?
私はといえば、それを聞いた瞬間完全に硬直。
な、何その少女漫画に出てきそうな台詞・・・。一気に熱が顔に集中して、超動揺。
いやあ、私も一応女なんだなあ。

「な・・・なんかくさい台詞が聞こえた気がするー」
「・・・やめて言った本人目の前にいるから」

なんだかんだで恥ずかしいのか、手で顔をぱたぱた扇ぐ。
それを見てさらに照れる私。

「私だって十分はずいよっ!びっくりするし!そんなん言われたの初めてだし・・・」
「・・・ごめん」

犬がしょんぼりしてるときみたいにわかりやすくいじける。なんて言うか、尻尾が見えるような・・・。
そして私はなんともいえない罪悪感に襲われた。
照れ隠しで叫んじゃったとはいえあからさますぎるでしょ。
なんて素直な人間なの、拓海くん・・・。

「あのね、拓海くん?私全然怒ってないよ?」
「え?でも今迷惑みたいに・・・」
「めっ迷惑!?なわけないよ!」

そんな飛躍した変換されると思わなかった・・・。反省。
私だって、一応・・・一応ね?女だし?嬉しい、とか・・・・ちょっと思ってみたり、しなかったり。
だから迷惑なんて微塵も思ってない。

という気持ちを込めて思い切り首を左右に振る。

「なんだあ・・・よかった」

ほっと安心しきった顔で、嬉しそうにふふって笑う。
ほんと、子供みたいに正直なんだなあ。

「拓海くんよーちえんじだねえ」
「え?俺高校生だよ?・・・え?」

拓海くんはさっきとは対照的な表情で付け足した。
いや、そこは自信持とう。

「精神年齢の話」
「ああ!言われなれてる」
「だろーね」

機嫌よく返したとき、ふと上空に目がいった。
飛行機が、のどかに真っ白な線を描く。
そよ風が髪を優しくなでる。
体育の授業をしている生徒たちの、楽しそうな声が校庭に響いた。

「・・・みんなが勉強してるときに遊んでられるって、なんか楽しいよね」
「そーだねえ。あっ、じゃあ他にどこか行こうか?」
「行く!行きたい」

拓海くんの提案に目を輝かせると、子供?と笑われた。私はそれにべっと舌を出していたずらっぽく笑うと、屋上の扉を勢いよく開いた。
そして、逸る気持ちに任せて階段を駆け下りる。