きみのうしろ姿


私の、

自分勝手に巻き込んだんだ。

わがままに付き合わせた。

迷惑をかけた。


だから、
次は私が聞くから。
拓海くんの、力になりたい。

「何・・・?」

できる限りやんわりと聞く。
優しく微笑むと、目が合った。
拓海くんは、ゆっくりと口を開く。

「トイレ行きたい」


「・・・・・・・・は?」

「トイレ行きたい(笑)」


「・・・・・・・・は?」

「いやもうその下りいいから!漏れちゃうよぉ沙姫ちゃん!」

「・・・吐いて」

「んな無茶な!つか口からならいいの」

けたけた笑いながら言う拓海くんを見て、だんだん理解が追いついてくる。

えっと、つまり・・・嘘?
からかって楽しんでるだけ?
つーか、どこから嘘!?
そう思うと、心底腹が立ってきた。

「何だったの今の時間!!返せ私の乙女心!!もう勝手に漏らせばいいじゃん!!」
「沙姫ちゃんに乙女心ー?なんかおかしくな」
「おかしくねえっ!!もー1回言ってみろよ、ほんとに口から吐かせてやるから!!!」
「おーこっわ。乙女も何も、口悪すぎだよ」

拓海くんはまたしても愉快そうに笑った。
私はもう怒りを通り越して呆れていて。

「しかもトイレも嘘なわけね・・・」

拍子抜けして、重いため息が落ちる。安堵の気持ちも込めて。
笑い続ける拓海くんをキッと睨みつける。
人が心配してんのに何を平然と・・・。

「馬鹿じゃないの・・・」
「親父にも言われたことないのに」
「いーやあるね。ないならその親父も馬鹿なんだね」
「あたり」

拓海くんは楽しそうに言う。私はまた、馬鹿じゃないの、と続けて、つられて思わず吹き出した。
すると、拓海くんの顔がぱっと明るくなって、なんだか気恥ずかしそうにへへっと微笑んで俯いた。