きみのうしろ姿


でも昨日の今日じゃ・・・ちょっとキツい。
幸せそうに笑うあいつを見るのが。
まだ、振り切れてない証拠・・・。

ベリーが来る前に早く教室から離れたくて、じゃ、と敬礼した。
びっくりしてぽかんとしている拓海くんに微笑みかけ、くるっと後ろに回る。

すると、次の瞬間突如腕を掴まれた。
私は振り返って掴まれた腕と拓海くんを交互に見る。

「待って。俺も行く」
「・・・はい?」

でも授業は、と聞く前に、立ち上がった拓海くんに腕を引っ張られる。

「わっ・・・」

その力が思いの外強くて、目を丸くする。
いつもの穏やかな笑顔からは想像できないな・・・。

教室を出て、ずんずんと廊下を進む。
腕を掴まれているせいか、過ぎ行く人に二度見される。

それどころか・・・
なんかちょっと、
速くないっすか!?

「ちょっ!たっ・・・たくみくん・・・!」
「俺サボんの初めてなんだよねえぇぇ!!」

息を切らしながら必死についていく(じゃなきゃ引きずられる)けど、テンション上がったらしい拓海くんは夢中になって走り、どんどん加速して。
私はもうどうにでもなれって、やけになって走っていた。
ふたりで無我夢中になって走っているうちに、いくつかの階段を越え、やっと止まった場所は遥か遠くの屋上だった。

「う、嘘・・・」
「はー・・・つっかれたー!」

そんな表情はまるで見せずにはつらつと言う拓海くんを睨みつつ、深呼吸をして息を整える。
その時、授業開始のチャイムが鳴って。
ほんとにサボってしまった、と今更ながら思った。
それにしても屋上って、ベタだなぁとか考えていると、私の腕がまだしっかりと掴まれていることに気づいた。

「あのー拓海くん・・・」
「んー?」

やけに機嫌がよさそうに返事をされて、ちょっとギクッとした。
な、なに?なんでこんなにニコニコしてんの?
・・・じゃなくて。

「腕腕!ずっとつないだまま走ってたんだね」
「あーほんとだ!痛くなかった?」
「いや全然?」

解放された腕をひらひらと揺さぶりながら言うと、なんでか視線を感じて顔を上げる。
予想通り、拓海くんがじっとこっちを見ていた。

ん?なんだ?