きみのうしろ姿


「沙姫ちゃん?」

拓海くんの声で、金縛りが解けたみたいにはっと我に返る。
見上げると、蒼衣と拓海くんが心配そうな面持ちで私を見つめていた。

私は多分相当動揺してて、一瞬言葉を失った。
そして、深いため息を吐きながらずるずると机に伏せる。

「大丈夫?」
「・・・ごめん。助かった」

弱弱しく言いながら困ったように笑う。

だめだ、こんなんじゃ。
目が合ったくらいで。

自分から振られに行ったのに。
直希だってつらいのは同じなのに。

その時、ホームルームのチャイムが時間を告げた。

「わ、やば!じゃあね沙姫!拓海くん、後は任せた」
「いえっさー!」
「あぁ・・・ごめん蒼衣」

走り去る背中を見ながら両手を合わせる。
すれ違いで担任が入ってきた。
そして、特に用はないけど窓の外を見る。
ほんとは、景色なんか悠長に見てられるほど、余裕はないんだけど。

「・・・はよ」
「・・・うん」

なんだそれ。

・・・
いいのいいの、これで。自分が望んだ結果でしょう?もーすっぱり諦めちゃえ!そしたら新しい恋もできる!もー知らないぞ私は!勝手に誰とでも好きなように付き合えばいいわっ!

ホームルームが終わり、私は何事もなかったかのように拓海くんに話しかける。

「一時間目何?」
「えー国語?」

はっ・・・?
何で今、このタイミングなわけ。
神様のアホ!

いや!いやいや。もう知らない。もう諦めるって決めたんだ。
気にしない気にしない!

「よぉしサボろう」
「え?サボるって・・・サボタージュ!?」
「そーっすね」

って言いながら逃げる・・・。