きみのうしろ姿

⇒沙姫side⇒

あんな風に言ったけれど、
正直もう・・・
耐えられなかった
離れないといけないなんて。

想像を絶する深い悲しみの底
出口のない迷路を、ひとり延々と彷徨う。

暗い。
冷たい。
こわい。
だれか・・・

もうなにもわからないよ。


「うぅっ・・・!」

なんで今の私そっくりなんだよぉ!なんで「だれか・・・」で止めちゃうんだよぉ!なんで私泣いてるんだよぉぉ!
もうなにも・・・わからないよ・・・!!
私は号泣しながらケータイ片手にじたばた暴れた。

「うわっまた泣いてるし」
「またってなんだよばか!」

繰り返してるって意味よ、と見下ろしてくる蒼衣に、知ってるわい!と噛み付くように言う。

またっていうのは、私が振られたあの日のこと。
直後で、しかも初めての失恋だった。

刺されて突かれて塩もみこまれたみたいにずきずきと痛む無防備な心を、なんとか正気に戻すため。
あと、帰りに鉢合わせしないため。
放課後蒼衣んちに押しかけて、気が済むまで泣きまくった私を、蒼衣は何も言わずにそっとしておいてくれたけど。

たぶん、全部わかってると思う。


私が振られたこと。

それで散々泣いたあと、蒼衣はらしくもなく私の頭をなでた。
びっくりして見上げると、それに気づいた彼女が、よーしよーし、とまるで子供をあやすときみたいに言って。
べーっと舌を出した。

って・・・めっちゃいい感じだったのに・・・!

「そこには触れなちゃいけないって察してよ!日本人のくせに!」
「日本人を神かなにかと勘違いしてる?ってか私日本人じゃないし」
「うそっ!?」
「うっわだまされた人はじめて見た」

うおい、と心底頭に来た私は彼女をじろりと睨む。
蒼衣はさも愉快気に笑った。

「昨日の優しさはどこへ一体行ったの・・・」
「・・・まって。日本語おかしいから」

蒼衣はきょとんとした顔で指摘した後爆笑し始めた。
素で間違えたせいで真っ赤になっていると、拓海くんが登校してきた。

「おはよ。・・・なぜ爆笑してんの」
「さあ?妖精でも見たんじゃない」