きみのうしろ姿


だけど――。

「うん」

もうとっくの昔に、後戻りなんかできないことくらい、わかってる。
俺にとって、立場がどーこーは視野に無い。
立ち止まる気なんか、さらさらないしね。

・・・
ん?
なんか、顔色悪くね?
俺は彼女の顔を覗き込むようにしてすとんと腰を下ろす。

「・・・沙姫?」

眼は合っているけど、実はどこも見てないようで。
俺が不思議そうにそれを見つめていると、沙姫はすぅっと息を吸った。

「・・・直希」
「うん?」

なるべく刺激しないように、やんわりと相槌を打つ。
・・・?あれ、今・・・
笑った・・・?

「・・・あのね」

だけどその笑顔は次第にぎこちないものに変わっていって。
俺は言葉を失った。

なにお前、泣きそうになってんだよ―――

「好きだよ」


「――は・・・?」
「・・・すき」
「なっ・・・なにが?」
「何度も言わせないで・・・」

沙姫は見たこともないくらい真っ赤になって俯いた。
そんなのを見たのは俺史上初で、正直動揺した。

だってこんなの
うそだろ、とも思えない。
思いたくても、たぶんそれは自惚れにしかならない。

絶対本気じゃん。

完全に不意打ち。

「い、いやいやいや・・・っ、ありえねーだろふつーに考えて・・・」
「・・・ごめん」

やっぱ本気だよ!!
えっ?まじで!?ほんとに俺がすきなの!?えっいつから?なんで俺!?
謎な要素が多すぎる・・・。
だって俺ってただの幼馴染だろ?
そこに疑問なんて、持ったこともない。
小さいころからずっと一緒にいた。
でもそれだけ。
それ以下でも、それ以上でもない。

この関係が崩れるなんて、今までだって一度も無かったのに。