「あれは面白かった!えーっとなんだっけ?みかんが好きなんだっけ?」
「うるさい!もう~忘れてよぉ・・・」
私は噛み付くように言う。
「ある意味才能だと思うよ!」
「そんな才能嬉しくない~・・・」
そんな会話を交わしていると、
「朝倉、そこオレの席」
頭上から聞き慣れた声が降ってきた。
それだけで、誰かなんてすぐにわかる。
そして、不覚にもドキッとしてしまう。
「あ、ごめん杉岡」
蒼衣は彼を見上げてそう言うと、素直に席を立った。
そして、私の隣の席に移動する。
私は前に座った彼の背中をちらりと見た。
そして、腕の中に顔をうずめる。
あー・・・やっぱだめだ。
全然慣れない。
直希が前にいることに。
このクラスになってから、何回目かの席替え。
私の前の席にいたのは、直希だった。
直希が近くにいると、心臓がどきどきうるさい。
授業に集中できない。
前より目が合う回数が増えた。
とにかく、慣れない。
今だって、まだドキドキいってるし。
「・・・って沙姫?聞いてる?」
「・・・え、あー・・・うん」
ごめんね蒼衣。
直希が近くにいる時点で、私は他のことなんか全然集中できない。
そのくらい、私は・・・――――

