きみのうしろ姿


でも私はこいつのそういう優しさを好きになったわけで。
何も言えないじゃないか。

「ほんとに・・・好き、なの」

最後にもう一回だけ。
という言い訳をして、私は結局期待をしていた。

もしかしたら、戻ってきてくれるんじゃないかって。
結果は見えていても、往生際が悪い自分がどこかにいる。

諦めきれない。

「・・・うん」

直希はそっぽを向きながら頬を赤く染めて言った。

「・・・そ・・・か」

私の希望はもろく崩れ落ちた。

わかっていたことでしょ。
それをあえて選んだのは私。

なのに後悔してる?
馬鹿なのは、どっちだよ?

「・・・沙姫?」

気づいて欲しい。
私もここにいることを。

私の前を歩いているきみは、後ろに私がいることを知らない。
だから必死についていこうとしても、ペースは遅くならないし、振り返ることもない。

ねえ、だから気づいて。

私だって、ずっときみを見てきた。

ずっときみが好きだった。

気づいたところで、何も変わらないかもしれないけれど。
私はこのままじゃ嫌だと思った。
このままきみのうしろ姿をだけ追い続けるのは。
辛いし、嫌だって。

「・・・直希」

「うん?」

ばーか。
こんな時にそんな優しい顔すんの。
ずるいし。

「・・・あのね」

やばい。
泣きそう。

あー、もう無理。

私は溢れて止まらない気持ちを流しながら、懸命に笑顔を作った。


「好きだよ」