それから私たちは教室に戻って、授業は何事もなかったかのように始まった。
だけどただ一人、私だけは授業に身が入らずにいた。
ずっと頬杖をつきながら窓の外を見て、考え事をしてはため息をつく。
その繰り返し。
考え事をしている間にも、当然遠くでベリーの声が聞こえる。
耳を塞ぎたくなる思いだった。
だから、いつの間にかチャイムが授業の終わりを告げていることにも気付かなかった。
みんながまばらに席を立つ音を聞いて、慌てて黒板に並べられた文字を真っ白なノートに写す。
「はい、みんなお疲れ様!次小テストするから、ちゃんと勉強しといてねー」
ベリーが笑顔で言うと、途端にクラス中の生徒から非難の声が上がる。
でもベリーはそんなのまるで気にしない素振りで、こちらに歩み寄ってきた。
直希の視線が、素早く反応したのを感じた。
私は無意識に肩に力を入れる。
それを見たベリーは、一瞬悲しそうに目を伏せたあと、すぐに困ったように笑った。
「そんなに身構えないで。・・・ちょっと、手伝ってほしいことがあるの」
「手伝い・・・」
疑いの目で見る。
「来てくれる?」
断る理由はない。
でも、ここにきて二人きりになるのはすごく気まずい。
ベリーの話を聞かないといけないことも、わかってるけど・・・。
きっとベリーは、あの部屋で直希と話したことを私に伝えるつもりなんだ。
盗み聞きした内容に自分の名前が登場したことを思い出した。
私は仕方無しに頷くと、席を立った。
拓海くんが、どうしたの、と聞いた声がした気がする。
体が鉛みたいに重くて、私はその場で動けない。
すると、私の代わりにベリーが、拓海くんににっこりと微笑みかけた。
その、笑顔は、どういう意味なの?
なんて、怒ったって仕方がない。
でもどう考えたってそれは、敗者に情けをかける、勝者の笑みでしょう?
だめだ。
嫉妬で、
劣等感で、
焦燥感で、
胸が潰れてしまう。
ベリーをけなす言葉しか浮かび上がらない。
ベリーはただ笑っただけなのに。
その真意は計りかねない。
でもいやみなんかじゃない。
はず。
おかしいのは、私だ。
私は自分の感情をかき消すように、わざと大声で言う。
「行こう、ベリー」
ベリーはそれにゆっくりと頷く。
そこにいつもの笑顔がないことに、私は気づいていた。

