⇒沙姫side⇒

「・・・次なんだっけ」

独り言で呟く。
すると、後ろの席の拓海くんがそれを聞き取ったみたいで、

「現国じゃない?」

そう教えてくれた。
でも、その一言で私の心は一気に曇る。

「え、まじか・・・」
「嫌なの?現国」
「・・・嫌、ってわけじゃないと思う」

嫌ってゆーか、会いたくない・・・。

ベリーのことだから、きっと昨日の私の行動を気にしている。
だとしたら、私に話しかけてくる確率は高い。

・・・。

あれ?

私がベリーのことを無視したら、何になるんだろう。
直希の気持ちが変わるわけじゃないし、ベリーの気持ちが直希に向くのを防げるわけでもないのに。

・・・いや。

私から大切なものを奪うかもしれないんだよ。
最低でしょ。

最低・・・

なんでしょ?

そうなんだよね?

嫌なものが胸の中を渦巻く。
気持ちがぐらぐら揺らいでいた。

何でベリーのこと無視したんだろう、私。
怒りとか、嫉妬とか。
自分の気持ちを沈めるための、ただの嫌がらせ?

・・・そうかも、しれない。

「・・・は」

私は顔を引きつらせながら失笑した。

―――最低なのは、どっちだよ。

優しさで差し伸べられた手を振り払った。
罪悪感さえも、感じずに。
ベリーの気持ちも考えずに。