きみのうしろ姿


「つっかれたー!」

よくこんなに運んだな、俺。

プリントの山を見てそう思った俺は、少し休憩しようと窓に寄りかかった。
いつの間にか、辺りはだいぶ薄暗くなってきていて。
吹奏楽部の楽器の音や、運動部の掛け声が聞こえてきた。

「おおっ元気だなー」

若者らしくないセリフを呟くと、何か聞こえてこないかと思い立ち、耳を澄ませる。

金管楽器の音。
サッカー部のボールを蹴った音。
陸上部の笛の音。

それに混ざって、微かに聞こえた。
―――泣き声?

「・・・おいおい」

まさかと思ってもう1度耳を澄ませる。
こんな時間に?一体どこで?

・・・グスン・・・グスッ・・・

今度は確かに、下の方から聞こえた。
窓から身を乗り出すと、ちょうど1つ下の階の部屋の窓が開いている。

あそこ・・・から?
若干ホラーなんだけど・・・。
てか、泣いてる?
誰にも見られないように、1人で・・・?

そう考えると、なんだかいてもたってもいられなくなって、急いで階段に向かって走り出した。

下の階だから、2年生の教室があるはず。
そこの教室に、泣いている人が・・・。

すすり泣く声が、次第に鮮明になっていく。

「・・・幽霊じゃありませんよーに」

グスッ・・・

確実に、泣き声の持ち主はこの教室にいる。
気持ちを落ち着けるため、深呼吸をした。
そして、気づかれないようにそっと教室を覗く。

本当に幽霊だったらちょっとおもしろいのに。
そんなことを考えていた。

でもそこにいたのは、見覚えのある人影。

シルエットが見えただけなのに、なんでわかったんだろうな。
それを見たオレの心臓は、大きく跳ねた。
よく見ると、ケータイを握り締めた右手は震えていた。

そして、彼女の頬はやっぱり濡れていて。

思わず扉を開けてしまった。

驚いて振り返ったのは、ベリー。
視線が合った瞬間、ベリーは口元を手で覆い、くるりとオレに背を向けた。

「ご・・・めん・・・!」