ユキさんは主にファンタジー系の小説を書く人。
今書かれているのは、魔法を使う主人公とその個性的な仲間たちが敵を倒していく王道バトル。
一見ありがちな設定だけど、書き方しだいで面白くなる。
私はユキさんのスレッドを開いてため息をついた。
「いいなあ・・・私もこーゆーの書いてみたい・・・」
「それは・・・諦めたほうがいいね」
「うっ・・・ひどいよお蒼衣~」
私は机に突っ伏し、すねるように言った。
私だって、こんなにすごいの書けるわけないって、わかってるけど・・・。
でもさ、やっぱり憧れるよ・・・。
拗ねる私を見かねたのか、蒼衣は渋い顔をした。
「だって・・・ねえ覚えてるよね?中学んときの」
「覚えてます・・・」
中学の時。
ある日、私は国語の教科担任に呼び出された。
用件は、夏休みの生活作文について。
「あのな白井ー・・・いくらなんでもこれは・・・」
「え?何か問題でも?」
「ありまくりだよ!」
その問題の作文というのがこれ。
『私はみかんが好きです。
あなたはみかんが好きですか?
でも、夏みかんは嫌いです。
苦いからです。
だから、私は早く冬こないかなあと1年中考えています。
それから、私はみかんが大好きです。
でも夏みかんは嫌いです。
苦いからで・・・
あれ?
これさっき書いた。
間違えた。
えへ☆
そういえば、この前、セミを捕まえました。
捕まえたのは家の近くの公園です。
でも、母はセミにうるさいといいました。
セミは公園に逃がされました。
だから私は家を出ました。
お母さんのバカッ!・・・』

