「ベリー・・・164ページってどこ?」
クスクスという笑い声が教室に広まると、誰かが呆れ気味にそう指摘した。
「え?あっ・・・あー!ごめんなさい!」
自分の間違いに気づいたのか、あたふたと慌て始める。
「どうやら164ページはなかったみたいですが?」
「いや・・・ベリーの心が汚いのかもしれないよ!?」
「まだ言うか」
さすがにベリーがかわいそうになってきたので、私は拓海くんの頭を軽く叩いた。
彼はちぇっと言いながらも、慌てふためくベリーを見ながら、くすりと笑った。
ほんと、羨ましいくらい人気だなあ。
私は気を取り直して黒板に文字の羅列を書き始めるベリーを見ながら微笑む。
そして、黒板に向き直る。
でも。
前の席のあいつの表情を見て、私の笑顔は消え去った。
え・・・?
なんで?
なんでそんな顔、ベリーに向けてしてるの?
直希は、愛おしそうな熱い視線を、ベリーに送っていた。
そして表情は、さっき私に見せた、見たこともないくらいに優しい笑顔・・・。
そんな顔、ずっと隣で直希を見てきた私も、1度だって見たことない。
私の頭の中は真っ白になった。
今までの直希と女の子の関係なんか、ずっと遊びだった。
本気のなんか、見たことなくて。
本気か遊びかくらい、ずっと隣にいたんだから、私にだってわかる。
・・・この顔は、間違いなく本気だ。
認めたくない。
でも、間違いない。
心が、凍りついた。

