「みなさん席についてー」
そこにタイミングよく、ベリーが教室に入ってきた。
「お、噂をすれば」
「きましたね、ベリー先生」
拓海くんとこそこそ話していると、私の横を直希が横切った。
直希は私を一瞥すると、フッと微笑んで席に着いた。
え・・・?
今、なんで笑ったの?
表情は、見たこともないくらいに優しかった。
でも、なんで私に・・・?
訳が分からないまま直希の背中を見つめる。
「きりーつ」
私の困惑を知る由もない日直は、号令をかけた。
それを聞いたみんながまばらに立ち上がる。
それに気づいた私は、みんなより少し出遅れながら慌てて立ち上がった。
「れー、ちゃくせーき」
一通りの動作を終えると、ベリーは授業を始めた。
「はーいじゃあ教科書の164ページを開いてー・・・」
「・・・ん?」
164ページを探した私は思わずそう声に出した。
164ページ・・・存在してませんが?
「これは・・・やっちまったんじゃないですか!?」
私はすぐさま振り返り、164ページを必死で探している拓海くんに言った。
「いや沙姫ちゃん・・・諦めるのにはまだ早いよ!」
「というと?」
私は早くもニヤつきながら聞く。
「もしかしたら、心の綺麗な人だけに見える164ページがあるのかもしれない!!」
「ふはっ」
私は思わず吹き出して笑った。
拓海くんには、奇想天外な発想力があった。
たまによくわからないことを言うこともあるけど、私はこの「拓海ワールド」にかなりハマっている。

