「…わからないから聞いてるのに。だって、騙した上に…こんなことするなんて酷いよ」


私は彼から目線をはずし、俯いた。

でも、すぐに彼の手によって顎を持ち上げられ、触れそうなくらい近距離でまっすぐと見つめられる。


「…本当はおまえのことが、ずっと好きだったからだよ。女友達だなんて、一度も思ったことはない。…あいつのふりをしておまえを騙してでも、おまえに触れたかったんだ」


そう言って、彼は私の身体を再び強く抱き締めた。







――女のこと、何もわかってない。

『好きな人』の顔とか表情とか声とか感触とか、間違えるわけないでしょ?

最初から、彼氏なんかじゃなくて、『ずっと好きだったあなた』だって気付いてたの。

その愛の言葉を『あなた』の口から言わせたくて…

『あなた』に触れたくて、気付かないふりをした。




――さぁ、罠にかかったのは

どっち?



Fin.