「おまえってさ」

「え?」

「鈍いよな」

「…そんなことないと思うけど?」

「どうだか」


彼がニヤリと笑った。

…いつもは見せないような、悪い笑みを。

つつ、と彼の指が私の唇をなぞり、口を開いた。


「鈍くないなら普通気付くだろ?」

「…」

「…俺が、」

「…」

「…あいつじゃないってこと。双子で似てるからって言っても、さすがに気付かねぇ?」

「!」


つまり。

たった今触れ合っていたのは、私の彼氏…の双子の弟だということ。

彼氏よりも付き合いの長い、男友達だ。

そして、私が彼氏と付き合うことになった『原因』でもある。

私は冷静を装って、彼に疑問を投げ掛ける。


「…何でこんなことを?」

「…さぁ?何でだと思う?」


お互いに探り合うように、真正面から向き合い、見つめ合う。