…あ、また寝てる。

私は大講義室に入った瞬間、その姿を見つけた。

――この前見た、ネコ王子だ。


最近、ネコ王子が同じ授業を受けていて、私の1学年下の後輩だということを知った。

その日から、自然と彼のことが目に入るようになっていた。


私はネコ王子を眺めることができる場所に無意識に座る。

教材をバッグから取り出していると、


「――サトシ」


ある声が耳に入ってきて、私はその方向に目をチラリと向けた。


「――…ん……せんぱい?」


呼び掛けにネコ王子は顔をゆっくりと上げ、声を掛けた人物を見上げる。

ぽけらとしていて、寝惚け眼だ。


「これ、借りてたやつ。ここ置いとくから。ありがとな」

「んあ、はい…」


むにゃ、とまるでネコが顔を洗うように手で目を擦り、再び机の上に突っ伏した。


ぷ。

かわいい。

さすがネコ王子。


彼は完全に私にとっての癒しで、眠くてダルいはずの1時限目だというのに、毎回この時間が楽しみだったりする。

きっとネコ王子のことはずっと見ていても飽きない気がする。

なんかもう、かわいいんだもん。